お隣の国、韓国の文化や習慣は日本と似ているような印象がありますが、暮らしてみると日本とは大きく異なる部分が沢山あります。例えば発音が全く同じの「無視」という単語ひとつをとっても、その意味は単に「気付かない振りをする」というものに限らず、「馬鹿にする、蔑む、軽蔑する」というニュアンスが含まれており、非常に否定的な意味合いも持っています。
このような言語上の違いだけではなく、マナー全般においても儒教の影響が根強く残っているため、基本的なマナーを知らないが故に誤解されることがあるかも知れません。
そこで今回は、韓国で知っておくべきマナーについてご紹介します。
韓国で無視は超失礼?知っておくべき8つのマナー
1. 無視は絶対にしてはいけないマナー違反
まずは無視する事について。冒頭でも触れましたが、韓国で無視する行為はとても失礼だとされています。過去の日韓首脳対談のとき、その映像が報道されたときに大変話題になりました。日本でももちろん失礼だと認識されていますが、韓国では「馬鹿にする、軽蔑する」という意味が日本に比べとても強いです。ですので、たとえ相手が苦手なタイプでも無視することだけは絶対避けましょう。
2. やはり儒教の国。目上の人に対するマナー
儒教精神が根強く残る韓国では、年上の人に対するマナーが徹底しています。
少しの歳の差であっても、基本的には年下の者が年上の人に「尊待語」という丁寧語を使い、相手が「言葉遣いをパンマル(ため口、対等な言葉遣い)にしていいよ」と言わない限り、丁寧な言葉遣いを続けるのが礼儀です。ですから初対面の人に年齢を聞くことも珍しくなく、年齢の差によって上下関係が決まります。
このような長幼の序は言葉遣いの他にも、電車やバスでお年寄りに席を譲る姿、目上の人が食べ始めてからお箸を手にとること、目上の人の前で鼻をかまない、年長者の前でタバコを吸わない、両親に対する丁寧な態度…等があり、儒教の国らしいマナーが数多く残っています。
なお、敬語については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
3. お椀は手に取らない!食事のマナー
食事のマナーにおいて日本と最も異なる点は、食器類を持ち上げずに食べるということです。ご飯であっても、味噌汁等のスープであっても、お椀を手に持って食べるのはタブーです。
韓国の食事にはステンレス製のお箸とスプーンが使われますが、ご飯やスープはスプーンで食べ、お箸はおかず類に使われます。お箸とスプーンを同時に持ったまま使うのではなく、お箸で大皿のおかずを取ってご飯の上に載せ、スプーンに持ち替えて食べる…という形が一般的です。家族や親しい人同士の場合は、真ん中に置いた鍋やスープを各自のスプーンで食べるのも自然です。
また、韓国人にとって正座は「罰を受ける罪人の座り方」という認識なので、座敷であっても正座をする人はおらず、女性があぐらをかいたり立膝で座ったりしてもマナー違反ではありません。あぐらや立膝には抵抗があるという人は、横座りで良いでしょう。
4. お酒はつぎ足さない!お酒のマナー
お酒の席でのマナーはまず、目上の人と一緒の場合、その人の正面を向いたまま堂々とお酒を飲んではいけないという点です。少し顔を横に向け、口元を隠すように飲むのが礼儀です。
日本的な感覚ではとても不自然に思われるかも知れませんが、韓国人にとっては当然の振る舞いなので誰でもスマートにこなしています。お酒は焼酎が最もポピュラーですが、目上の人にお酒をついでもらう場合、必ず両手でコップを持ちながら受け、一気に飲み干し、注いでくれた人に勧め返します。
日本と大きく異なるのは、お酒のつぎ足しをしないこと。基本的に飲み干されたグラスにお酒を注ぐので、まだ残っているグラスに注ごうとすると、一気に飲み干してから注いでもらうのが常識です。
なお、韓国語で「乾杯」の言い方や、飲みの場でよく使うフレーズについて、以下の記事にまとめていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
5. 相手の目をまっすぐ見るのは生意気?!
国によっては人の話は相手の目を見て聞くのがマナーですが、韓国人の場合、目上の人の目をじっと見続けるのは生意気と見なされます。少し伏し目で相手の話を聞くのが従順な態度と見なされるので、上司や目上の人の目をじっと見続けると、何か不満があるのかと誤解を招くかも知れません。
なお、韓国の仕事上で気をつけるべきマナーを以下の記事で解説されていますので、合わせて読んでおきましょう。
6. 手が肝心!手の動きに表れるマナー
韓国では幼い頃から、目上の人に対しては両手で受け取る、両手で手渡すことを教育されます。何気ない物の受け渡しであっても、年上の人に対しては必ず両手を使いましょう。年齢に関係なく、なるべく両手を使うしぐさは相手に対する敬意や配慮と受け止められます。
韓国では挨拶代わりに握手をすることがよくありますが、初めての相手なら年下であっても両手で握手するか、左手を右手のひじか右わき腹辺りに当てて握手するのが相手に対する礼儀です。相手が目上の場合は、相手が手を出す前に先に手を出さないように気を付けます。
また、お酒等を注いだり注いでもらったりする際も、必ず両手でコップやボトルを持つか、片方の手を右胸辺りに当てるのがマナーの良い振る舞いです。手の使い方は韓国のマナーを理解する上でとても重要です。
なお、韓国語のタメ語は注意が必要です。以下の記事で細かく解説していますので、合わせて読んでおきましょう。
7. お買い物のマナー
韓国のデパート等で買い物をする際、日本に比べると店員がぴったり寄り添ってくることが多々あります。何も言わずに商品を次々と触る行為や、勝手に試着する行為はマナー違反と見なされます。少し見て回りたい、試着したい旨をきちんと伝えるようにすると好印象でしょう。
また、東大門や南大門等のカジュアルなショッピング街でも、お店の商品に手を触れる前に店員にひと言断ってから触るようにしましょう。買う気がないのにやたらと商品を触ると、露骨に嫌な顔をされることがあります。
なお、買い物時に使える韓国語フレーズを以下にまとめてありますので、こちらも一読してみてください。
8. お金に関するマナー
韓国では割り勘文化が一般的ではないため、お勘定の際にレジ前で各自が自分の分を清算する姿を苦々しく感じる文化がまだ残っています。もちろん、最近の若者は割り勘を好む傾向が強くなっていますが、筆者の韓国人の友人は、ソウル観光中の日本人カップルがレジで割り勘する姿を見てとても驚いたと話していました。
基本的にカップルは男性が、グループでは年長者が支払う習慣が残っていますが、だからと言っておごられっぱなしでは失礼に当たります。食事をご馳走になったらお茶は支払う、前回おごってもらったから今回はご馳走する…などの微妙なマナーが存在します。
長く付き合えば付き合う程、きっちり割り勘の感覚ではなく、交互にご馳走する…という感覚を持つと良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
韓国には最先端のもの、新しいものを早く取り入れる文化がある一方、儒教の精神に基づいた保守的なマナーが今でも根強く残っています。利便性とスピードを好む韓国人ですが、マナーの面では昔のままの価値観を大切にしています。
最近は少しずつ薄れつつありますが、特に年配の人に対する丁寧な態度には儒教精神が色濃く感じられます。基本的なマナーを知ることは、韓国人とのスムーズなコミュニケーションに大いに役立つでしょう。
韓国で無視は超失礼?知っておくべき8つのマナー
1. 無視は絶対にしてはいけないマナー違反
2. やはり儒教の国。目上の人に対するマナー
3. お椀は手に取らない!食事のマナー
4. お酒はつぎ足さない!お酒のマナー
5. 相手の目をまっすぐ見るのは生意気?!
6. 手が肝心!手の動きに表れるマナー
7. お買い物のマナー
8. お金に関するマナー